第5章 2年〜夏休み〜
「東堂君」
私の方を見向きもせずにただ手を引いていく東堂君。
「……なんだ?」
「どうして私を助けたことをみんなに隠すの?」
すると、東堂君は足を止めて私に向き合う。
「女性を助けたことを鼻にかけるような男にはなりたくない」
「……意外と真面目だよね、東堂君って」
「意外とはなんだ?!」
それに、表情がコロコロと変わって見ていて飽きない。ただのチャラ男かと思ってたけど、性格はむしろ正反対。荒北に比べて弱そうだと思っていたけど、私の手を握る東堂君の手は大きくてがっしりとしている。
「宮坂さんの方こそ、堅物かと思っていたぞ」
「え?」
「1年にして生徒会長を務め、1人で生徒会を切り盛りしているわけだからな。正直、今日のお祭りも来てくれるとは思っていなかった」
東堂君は私の肩にそっと手を置いた。
「今日は会えて嬉しかった。それと、その服……よく似合っているぞ」
そういう東堂君の視線は泳いでいる。
「ありがと! 私もいつか東堂の私服みたいな」
「そ、それってまた……」
「修学旅行で会えるといいね!」
私の言葉に「……あぁ、そうだな」と小声で返事をし、東堂君は前を歩いていった。
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そして始まる行事、文化祭……!!