第5章 2年〜夏休み〜
夏休みに入った。
窓を閉めているにも関わらず聞こえてくる蝉の声。日差しは強すぎて、カーテンを開けたくもない。部屋から出たくもない。
「生徒会室は冷房入っててよかったぁぁぁ!!」
私は夏休みでも生徒会出勤です。
でもまあ、冷房も聞いて自販機も近くにあるこの部屋だからなかなか快適なんだけど。
(今日は自転車競技部のインターハイの結果と写真をホームページにアップしておこうかな)
私自身は大会を見に行っていないのだが、自転車競技部の人から写真を提供してもらったからね。
その写真の中に、唯一の2年生がいる。
(福富君……すごいなぁ。うちの学校は強豪なのに、2年生でインターハイに出るなんて)
「おめでとうの一言も言ってなかったな」
時計を見るともう12時過ぎだ。
(自転車部も昼ご飯の時間だろうし、ちょっと見に行ってみるか)
さっきまでは外に出たくないと思っていたのに、不思議と足取りが軽い。
(私は自転車競技部が好きなのかね? それとも、生徒にちょっかい出すのが好きなのかも)
案の定、自転車競技部は昼食休憩のようだ。
「宮坂チャンじゃなァイ。何の用?」
相変わらずメンチ切ってくる荒北。そんな彼も運動後だからいつもより覇気がない。疲れてるんだ。
「体から湯気出てるよ荒北。こんな暑さで運動とか、MだねM!」
「喧嘩売ってんのか?! 大体おめぇが俺をこの道に引きずりこんだんだろうがヨ!」
「私は似合わないヤンキーをやめさせただけで、自転車に乗れとは言ってないのであしからず」
私としては宥めたつもりだけど逆効果。汗臭い荒北にガッチリと首をホールドされる。
「く、苦しい荒北ぁ……!」
「ザマァミロ!」
「やめんか荒北!」
「靖友、相手は女の子だぞ?」
颯爽と現れるイケメン2人。東堂君と新開君だ!
「ほら……荒北っ……だから離せぇ!」
「んだヨ」
荒北がつまらなそうに私を離す。
「……汗臭っ」
「なんか言ったかー?」
「ナンデモナイデス」
私はゆっくりと荒北から距離をとって東堂君と新開君の元へ。
「今、昼休憩だよね?」
「うむ、その通りだが?」
「福富君いる? 祝いの言葉でも言おうかと思って!」
その時、みんなの顔が少し暗くなった。
「寿一なら……」
「呼んだか?」