第4章 新開君と私
あの日から暫くして、私はいつものように生徒会室で仕事をこなし、朝の始業時間になりそうだから教室へ向かった。
「おはよ、宮坂さん」
クラスメイトの新開君に声をかけられる。
「おはよう、新開君。元気?」
「おう、すごく元気」
新開君の満面の笑みに私は首をかしげる。
(なんでこんなに元気なのかな)
単なる挨拶で「元気?」と聞いてみたけど、予想外の反応だ。
「尽八から聞いたよ。俺のいない間、ウサ吉の小屋作りを進めてくれてたんだろ?」
「まあ、そうだけど」
「その点については申し訳ないと思ってるし、これからは手伝いに行くよ」
「うん?」
「宮坂さんが俺のこと気にして、1人で頑張ってくれてたんだと思うと、嬉しいんだよ」
新開君の言っている意味がわからない。
「生徒会長だし、てかそれ以前に元気のない人を心配するのは当たり前だし、困っている人を見かけたら助けなきゃね?」
「おめさんは優しいんだな」
「そう、なのかな……」
今まで考えてもみなかった。
(優しい、ね……)
なら、私の仕事を手伝ってくれる上にコーヒーまでくれた東堂君は優しい、ってことだよね。
正直この仕事柄、どこまでが義務でどこまでが親切なのかもわからないけど。
(私はみんなに頼られ、みんなに必要とされ、みんなに愛される生徒会長になりたい)
もうそろそろ夏休みが始まる。自転車競技部はインターハイが始まるし、私たち2年生は11月の修学旅行に向けて夏休み明けから準備を始めなきゃいけない。あ、その前に文化祭だ。
(頑張ろう)