第4章 新開君と私
私の足を潰している元凶を次々とどかしてくれる東堂君は、まさしく「男子」なんだなと思った。
(ただのナルシストじゃないんだね)
大口叩いてる奴は大したことない。持論というほどではないけどそういう考えを持っていた私にとっては嬉しい誤算だ。
足は解放され、楽になった。けど、少し力を込めると痛む。
「むっ……骨にヒビなど入っていないと良いんだがな」
「ッ!」
東堂君の手が私の足に触れた瞬間、私は少し驚いてしまう。そんな私を見た東堂君は「しまった!」という表情。
「し、し、下心などでは断じてないぞ?! ただ、怪我の具合が心配でっ……だが、何も言わずに触ったのは悪かった! 軽蔑しないでくれっ」
ただのチャラ男だと思ってたけど、むしろ紳士だった。
「大丈夫だよ。突然だから驚いただけだし。……たぶん骨は大丈夫だと思う」
「とりあえず保健室で足を冷やそう、おそらく腫れているだろうしな」
東堂君は私の前で背を向ける。
「乗れ」
(お、おんぶっすか)
東堂君の目がガチだったので、逆らわずに東堂君におぶられた。
「ごめんね、部活中に」
「後で先輩方には話しておくから気にするな。だいたい、宮坂こそ1人で廃材置き場にいて何をする気だったんだ?」
「新開君の世話してるウサギの、家を作ろうと思って」
「……新開の?」
私は東堂君におぶられながら言葉を続ける。
「ダンボール箱じゃ可哀想だったし、何よりあのウサギを守ることが新開君を守ることにもなりそうな気がしたんだよ。……今の新開君は悲しそうで」
「……よく人を見ているんだな」
保健室に着き、私はベッドに腰を下ろす。
「先生がいないみたいだからな。湿布とかなら勝手に使ってもいいだろう。探している間に靴下とか脱いで置くといい!」
私は靴下を脱ぎ、赤く腫れた足を見た。
(靴下のおかげで傷にはなってないな)
「俺の目からしても、最近の新開は様子がおかしかったからな」
東堂君は私の足に湿布を貼りながら呟いた。
「宮坂は素晴らしい生徒会長だな! 生徒1人1人の心の支えだ」
そう言い放った東堂君の美しい笑みを、私はずっと忘れないだろう。