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箱根学園生徒会長でございます【弱虫ペダル】

第4章 新開君と私


箱根学園自転車競技部の人と関わるようになってからしばらく経つ。

(体育祭も終わったことだし、あと少しで7月か)

生徒会の仕事を相変わらず一人でこなす自分に拍手を送りたい。

「夏休みの学校説明会の資料は作ったし、文化祭の準備も順調……」

パソコンのキーボードを打つ手を止め、缶コーヒーに手を伸ばす。

(東堂君、ね)

このコーヒーをくれたのも東堂君だ。


『俺は部活だから放課後は手伝ってやれんが、ほら! 休憩を挟んで仕事をするのだぞ?』

と言って渡されたコーヒー。

(東堂君が昼休みに生徒会室に来て仕事を手伝ってくれるの、結構有難いんだよなぁ)

私はパソコンを閉じ、生徒会室を出る。

(少し散歩がてら、自転車競技部を見に行ってみますか!)

そう思って外に出て歩いていると、

(ん?)

なにやら段ボール箱がおいてある。
不審に思って中を覗くと、そこには可愛らしい子兎の姿があった。

「か、かわぃぃ……」

随分と人馴れしているみたいで、私が抱き上げてもあまり抵抗しない。


「宮坂さん?」



その声に振り返ると、そこには新開君の姿が。

「どうして、その兎……」
「新開君が連れてきたの、この子?」

すると、新開君は私に勢いよく頭を下げてきた!

「その子の親は、俺が自転車のレースの時に轢き殺しちまったんだ! だから、放っておけなくて! 頼むよ宮坂! 世話はちゃんとするから、ここにその子を置かせてくれ!」

彼の声色から、どれだけ真剣なのかはわかる。

(命は、重い……よね)

ふと昔のことを思い出すけど、すぐに思考から追いやる。

「この子、何て名前?」
「ウ、ウサ吉だけど」
「ウサ吉、段ボール箱じゃ可哀想だよ」
「それって……」




「一緒に小屋、作ってあげよう? 先生には私から話しとくからさ!」




私がウサ吉を抱きながら笑うと、新開君は顔を赤くし、泣き笑いのような表情で頷いた。


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