第3章 血
スイーツ店に入って、席を確保した癒貴は、遅れてくる友人の彩矢を待っていた。その数分後、ドタバタと忙しそうに歩いてくる彩矢の姿。
「ごめ~ん。バス乗るタイミング間違えちゃって…。」
「いいよ、気にしてないから。とりあえず、彩矢がお薦めなスイーツはある?」
癒貴は、机の上にあったメニュー表を広げて彩矢に尋ねる。彩矢は、えっとね~…と言いながら椅子に座りメニュー表を見始めるのだった。
この2人がデパートから出る頃には、夕方となったのだ。癒貴と彩矢は、別々に家に帰る。勿論、母である沙耶のお土産を買った癒貴は、自分の家の扉を開ける。
その時、懐かしい声が癒貴に耳に入ってくる。
「そんじゃあ、お邪魔しました!って……癒貴じゃん。久し振りだな!」
振り返って、扉にいる癒貴に驚く男子。勿論の事、癒貴も驚いていたがすぐに微笑む表情へと変える。
「久し振り!大翔!元気にしてた?」
癒貴に話し掛けた男子は、湯川大翔。癒貴の幼馴染だ。ショートヘアーの黒に、少しつり目の黒の瞳。普通の人間。
そして、癒貴が吸血鬼だ…という事も知っている。大翔は、そんな事も気にせずにいつも通りの明るい声で話しかける。
「おう!暫く振りだな。俺は元気だ。そっちの学校は、どうだ?」
「そりゃー、元気だし。学校も楽しいよ!」
幼馴染と言っても、この2人はお互いに違う学校に通っている。だから、なかなかお互いに会えないのだ。