第6章 存在感
俺は、癒貴の家を出て行く。先程の癒貴の笑顔はある意味反則だった。あの笑顔を見た瞬間、心臓が痛くなる程の鼓動が大きく動いた。
それを落ち着かせる為に、俺は深呼吸をする。何度か深呼吸をすれば、だいぶ落ち着き俺は自分の家に帰ろうと考えていたが…何かの気配を感じていた。
「おい、居るんだろ?姿を現せよ…。」
「人間としては、随分、気配を感じるんスね。」
俺の呼びかけに姿を現す、モデルの黄瀬涼太だった。黄瀬は面白そうな顔を浮かべながら俺をじっと見ている。一度、癒貴の家を出たかと思えば、ずっと此処にいたことになる。
「何、癒貴の家にいるんだ?さっさと消えろよ。」
「まぁ、そろそろ…オレも退散すると思うんスけど…オレ一人だとは思わないことっスね。」
黄瀬は、瞳孔を細めては俺を睨み付けている。確かに、俺の勘では、黄瀬1人ではないことは感じとってはいた。だが、俺の勘は外れることもあるから当てにはならない。
先程から俺の背後から人の気配は感じ取ってはいた。一体、何人いるのやら、と悩まされる。
「まさか、あの娘(こ)にこんな幼馴染が――――」
「うるせぇよ、消えろって言ってるだろッ!!」
俺の作った握り拳が、背後にいた男子の顔面に当たり、勢いよく倒れる。
「あっ!森山先輩、大丈夫っスか!?」
どうやら俺が殴った男子は、森山と言われる…。というか、昼間に見かけた記憶がある。黄瀬の仲間か…。まさか、コイツも吸血鬼なのか…。
森山というやつは、俺に殴られた顔を抑えてはヨロヨロと立ち上がり俺を見る。
「いや…、君のパンチは凄いね…。流石と言うべきだ。」