第3章 血
はっきり言って、さっきの女子とぶつかった時は、焦ったな。思わず、腕を掴んじまった。力加減をしないと、人間の骨って弱いから簡単に折れちまう。
ましてや、人間の女子はな……。というか、さっきの女子から一切血の匂いがしなかった。セミロングの黒い髪。そして、少し大きめの瞳の黒。
血の匂いがしなかった為、その女子をずっと見ていたから絶対、怪しまれたな。だから、俺はその女子に、知り合いにそっくりだ…と嘘を言った。
その女子は、納得していたが俺に質問をしようとした時に、俺の後ろから真ちゃんの声が聞こえてきた為、その場を離れた。まだ、あの女子が気になって仕方ないから俺の【鷹の目(ホークアイ)】を使い、女子を見る。
そして、俺の隣に歩いている真ちゃん…つまり緑間真太郎に声を掛ける。
「なぁ~真ちゃん。血の匂わない女子っているのかな~?」
「何を突然に…。それに、此処は人が多いのだよ。そんな話をするな。」
真ちゃんは、眼鏡をクイッと上げ俺に注意をするが、そんな事を無視して同じ事を真ちゃんに問い掛ける。問い掛けた所で、嫌々な表情を浮かばせた真ちゃんは、答える。
「しつこいのだよ、高尾。血の匂わない女子など、有り得ないのだよ。必ず個性の血を漂わせている。血の匂わない女子など、存在しないのだよ。」
「でもよ~。さっきの女子は血が匂わねぇんだよ…。ホントだぜ!」
真ちゃんは、まだ俺が言った事を疑うような目をして俺を見る。というか、信じてねぇみたいだな。俺さ、真ちゃんの相棒だぜ?なんで、信じねぇんだよ…。流石に、傷付くぜ。
信じてくれよ~。俺のエース様~。そんな風に、俺は真ちゃんに一生懸命説明をするが、一切信じようという素振りを見せない。