第3章 血
癒貴は、スマートフォンを鞄に入れながら歩き角の所で曲がろうとした時、誰かとドンッ!とぶつかってしまった。咄嗟の出来事で、癒貴の身体が傾き倒れそうな所でぶつかった相手に、右腕を掴まれる。
「ご、ごめん。大丈夫っすかー?」
「此方こそ、余所見をしていたので…。すみません。」
お互いに謝り、きちんと立つ。其処には、ショートヘアーの黒髪の男がいた。見た目では、歳は癒貴と変わらない。男というより男子と言った方がしっくりくる。すると、その男子は癒貴を凝視する。
それが不気味に思ってしまった癒貴は、その人物に声を掛ける。
「あ、あの……何か?」
すると、パッ!とその男子は癒貴から離れる。
「悪いな~。どうも、知り合いにそっくりで思わず本人かな~って、疑っちゃった。ホント悪いな~。」
いきなり、ハイテンションになる男子。勿論の事、癒貴はいきなりテンションを上げてきたのに対して、とても驚いてはいた。
「謝る必要はないと思います。その知り合いって───」
「高尾、何をしているのだよ?次の場所に行くのだよ。」
癒貴の言葉を塞ぐように、その男子の遠くの方から声が聞こえてきた。よく見ると、其処には緑色の髪の毛と眼鏡が目立つ男子が立っていた。
高尾と呼ばれた男子は、クルと体の向きを変えて緑色の男子の方を向く。
「悪い、真ちゃん!!そんじゃあーな!!」
「え、あ、はい…。」
高尾は、癒貴に別れの挨拶をして、緑色の男子の方へと移動するのだった。癒貴は、高尾を見送った後、目的のスイーツ店を目指すのだった。その時、高尾がずっと癒貴の事を見ていた事に気付かなかった。