第3章 血
この2人に生まれたのが、癒貴だ。本来なら、人間と吸血鬼のハーフと考えるべきだと思うが、何故か吸血鬼の血の方が強い為、吸血鬼と考えた方が良い。
人間と吸血鬼の姿は、全く別なので普段では吸血鬼だと気付かれにくくなっている。更にもっと有り得ない事が、吸血鬼の世界では【男】しか産まれない筈なのに、何故か【女】が産まれてしまった。
勿論の事、吸血鬼である優斗が一番驚いていたが、逆に沙耶が喜んでいた。その様子を見て、優斗も嬉しくなってしまった。
「出掛けるのはいいが…吸血鬼には気をつけろよ。ついさっきもテレビでやってたからな。」
「多分、大丈夫だよ。まさか、【女】の吸血鬼がいるって事は、誰も気付かないよ。」
優斗は、心配で仕方ないのか癒貴に注意をする。それでも癒貴は、大丈夫だよ~と同じ言葉を言い笑っていた。勿論の事、母である沙耶も少し心配をしていたのだった。
やがて、翌日癒貴は彩矢と約束したスイーツ店に向かうのだが、デパートの中にあるという。すると、癒貴のスマートフォンが急に鳴り出す。
其処に表示されていたのは、彩矢の名前だ。不思議に思いながらも癒貴は、電話に出る。
「ん?どうしたの?」
『ごめーん、バスが遅れちゃって…。もう少しで、着くんだけどさ…先にスイーツ店に行ってもらえる?人気の場所だから、席…取っておいてくれない?』
「いいよー。てか、バスの中で電話はマズくない?」
『そ、そうだね…。じゃあ、切るよ。』
そして、お互いに電話を切る。