第5章 特別
座り込んでしまった癒貴の姿を見た大翔は、慌てて近寄り支える。
「大丈夫か?」
「………なんとか…。」
大翔の質問をなんとか答える癒貴の声は、とても弱々しかった。顔色もそんなに良くはない。
「今度も貰うっスよ。とても美味しいから!」
黄瀬は、満面の笑みを浮かばせながら癒貴の家を出て行くのだった。癒貴は黄瀬に向かって、もう来るな、という瞳し睨み付ける。
ガチャ…と扉が完全にしまった事で、はぁ~と大きな溜息をする癒貴。
「ホント、お前って吸血鬼を惹きつけるよな…。」
大翔は、少々呆れた表情をしながら癒貴に向かって言うと、癒貴はムス…とした顔をしていたが、やがてすぐに表情を変える。
「そういえば、何で私の家に訪ねたの?」
そう、いくら幼馴染とはいえ勝手に家に上がるという事はない。癒貴にとっては不思議に思っていたところを、大翔はポケットからスマートフォンを取り出し、癒貴に見せつける。
「お前の面倒を見てくれ、って頼まれたんだよ。」
大翔のスマートフォンの画面には、メールが開かれ送った人は『沙耶』と書かれていたのだ。
恐らく沙耶は、娘である癒貴の事が心配で仕方なかった為、大翔に面倒を見るようにメールで頼まれたみたいだ。
「お母さんが……?」
「そうだ。余程…心配だったんだろうよ…。」
癒貴の母親である沙耶の優しさに、ポロポロと涙を流し始める癒貴。勿論の事、大翔はオドオドとする。