第5章 特別
癒貴が思っていた以上に、血を吸われて頭の中の思考も低下している。考える事が一切出来ない。その事に、怒りを感じていた。
「あれ、もしかして…俺飲み過ぎたっスか?」
「……。」
黄瀬本人は、自覚なしでも癒貴の様子で分かったみたいだ。癒貴は黄瀬が自覚してない事に呆れている。
「…とりあえず、出て行ってよ……。」
もう一度同じような言葉を言う癒貴。でも、黄瀬はどこか納得しないのか、うーん…と言葉を漏らすばかりだ。それもまだ帰りたくないという顔をする。
「もう一回、血が欲しいっス。」
「はぁっ!?」
どうから黄瀬は物足りないみたいで、癒貴に血を求める。しかし、先程血を飲まれてしまった癒貴は、勿論の事すぐに拒否をする。
「嫌だよ!さっきも飲んだくせに!!」
「物足りないっスよ…。欲しいっス…。」
黄瀬はまるで犬のおねだりのような仕草を見せながら、また徐々に癒貴に近づく。流石の癒貴も、死ぬと考えてしまったみたいで、一歩後ろに下がる。
「へぇ~…、黄瀬…。何をしてる?今すぐソイツから離れろッ!」
黄瀬の後ろから声を掛ける人物…大翔だった。大翔の右手には既に拳が作られていた。この様子だと、すぐにでも黄瀬を殴れる状態だった。
その姿を見た黄瀬は、残念そうな表情へとすぐに変える。
「あ~あ。残念っスね。今回は、ここまでみたいっスね…。」
黄瀬は、ゆっくりと癒貴から離れていく。それを見た癒貴はホッとしたのかその場でヘナヘナ…と力無く座り込んでしまう。