第5章 特別
そう癒貴は、黄瀬や他の吸血鬼には家の場所を教えてないのだ。では、何故知っていたのか…という疑問だらけになってしまう癒貴の頭の中。
その様子から黄瀬は、クスクスと笑うばかりだ。状況が分かってないのは癒貴だけだ。それでも、癒貴は黄瀬に出て行ってもろうとする。
「早く、出て行ってよ!!」
「いいじゃないっスか…。丁度、お腹減ってるから…。」
その言葉を聞いた癒貴は、まさか…と思いながら嫌な汗が背中から流れ出す。そう、吸血鬼がお腹空くというのは血を求めている証拠。
黄瀬はその隙に、癒貴の両腕を掴み自分の方へと引き寄せる。そして、黄瀬は癒貴の首を顔を埋める。
「は、放せッ!!」
癒貴は、持っている力で振り払おうとしてもびくともしない。黄瀬は、それを無視して口を軽く開ける。
「いただきまーす!」
黄瀬の牙が、癒貴の首筋に入っていく。その痛みで、癒貴は悲鳴をあげる。だが、それはどこか強引の痛みとは違う。快楽へと誘うような痛みと錯覚に落ちる。
「っ、ん……。」
血を吸われているのにも関わらず、何故かそれが気持ちいいと感じてしまう。そして、何よりも癒貴の血は特別。【女】の吸血鬼の血は、とても美味しいというのだ。
やがては、満足した黄瀬は癒貴の首筋から牙を抜く。
「ごちそうさま!とっても美味しかったっスよ!」
「……だったら、早く帰ってよ……。」
先程元気よく黄瀬を帰らそうとした癒貴の声が、弱々しかった。血を吸われて力が出ないみたいだった。