第5章 特別
僕は、癒貴さんの血を吸ってすっかりと元気を出してしまった。程よい甘さであさっりとしたあの感覚を忘れられないです。
僕が、部屋に戻ろうとした時、後ろから声を掛けられる。
「やぁ、テツヤ…。どうやら癒貴の血を飲んだみたいだね。」
僕の後ろに立つ赤司君。僕は、振り返ってはい…と短く答える。
「とても美味しかったです。今まで飲んだ事もない味でした。」
「そうだろうね…。何よりも彼女は、吸血鬼なのだから…。」
赤司君は、まるで新しい玩具を見つけたように、楽しくそして、不気味な笑みを浮かべてクスクスと笑う。
僕から見ても、その表情は背中から凍る感じがした。しかし、僕がここで何か言ったとしても彼は止まらないだろう…。
「赤司君…まさかとは思いますけど…。彼女を殺すのですか?」
僕は、恐る恐る赤司君に質問をする。しかし、赤司君はいや…と言いながら首を左右に振る。
「今回ばかりは、すぐに殺さないさ。彼女の血は興味深い。彼女の血を吸い続ければ…よからぬ事でも起きるだろう…。」
「よからぬ事…?それは一体……。」
「さぁな。どうだろう…。」
赤司君は、肩を竦め何処かへと歩き始める。はっきり言って、今赤司君が考えていることが僕にとっては分からない。
だけど、赤司君の言った通り彼女の血はとても美味しい。あの味を思い出すだけで、また吸いたいという気持ちが溢れてくる。
──癒貴さん、覚悟していて下さい。必ず、僕のモノにしてみます。