第5章 特別
歯を立てて、癒貴の人差し指に喰らいついた為、其処から流れ出す真っ赤な血。その血を丁寧に舐めていく黒子。
黒子が先程、謝罪の言葉を出したのはこれをするためだった。痛みが全身に伝わり、僅かに顔を歪める癒貴。
抵抗したい所だが、二号を抱えている癒貴は何を出来なかった。ただ、血を吸われている事しかなかった。
血を吸われている為、強制的に癒貴の瞳は吸血鬼の目になってしまう。勿論の事、吸っている黒子も吸血鬼の目になっている。
まるで、黒子は飲み物をストローで吸っているのように癒貴の血を飲んでいる。やがて、黒子は満足したのか癒貴の人差し指が黒子の口から放れる。
癒貴の人差し指は、噛まれた筈なのに治癒能力が高い為、すぐに癒えてしまう。
「とても美味しかったです。ありがとうございます。」
「っ、誰もあげるって言ってない。」
黒子は、癒貴の血が余程美味しかったのか、満面の笑みを浮かばせる。逆に、癒貴は険しい表情をしていた。
癒貴の腕の中にいる二号は、く~んく~んと鳴きながら、癒貴の頬を舐める。やはり、二号が可愛いのか癒貴は苦笑しながら、二号の頭を撫でる。
「二号は、どうやら癒貴さんの事を気に入ったみたいですね。」
「……そう………。」
癒貴は、黒子に素っ気ない返事をし二号を地面へと下ろしていく。地面についた二号は、黒子の方へと元気よく向かう。やがて、黒子に近づいた二号を抱き上げる。
「……もう、私に関わらないで。」
「それは、無理な話です。」