第5章 特別
笠松は、心配そうに黄瀬を見る。
「大丈夫っスよ!平常っス!!本当なんスよ!赤司っちも言ってたし…。」
「……赤司が?」
笠松が呟くように言うと、黄瀬はコクリと頷く。笠松と森山はお互いの顔を見て、少し無言になる。
やがて、信じるしかないか…と呟くように言った森山。黄瀬は、笠松の方を見て言った。
「笠松先輩…最近、血飲んでないっスよね…。そろそろ、飲まないとマズいんじゃないんスか?」
「いや、分かってはいるが…。苦手なんだよ……。」
笠松は、女性が苦手ということで、血はなかなか飲めない。吸血鬼は、異性の血を飲まないと意味がないのだ。
笠松の場合は、一苦労で血を飲むみたいだ。他の吸血鬼から比べると、血を飲む回数が少ない。
吸血鬼は、血が栄養分の為飲まないと死ぬ事に、なるらしい。笠松は、女性が苦手という意識があるため、何度か倒れたらしい。
その時、黄瀬や森山のおかけで助かっているみたいだ。本人も女性苦手を直そうとするがなかなか難しいらしい。
「……まぁ、血の事はまた後でだ。今は、約束の場所に向かうぞ!」
「分かったよ、笠松。」
笠松のかけ声で返事する、森山。黄瀬の瞳には、少し不安を移していた。笠松の事が心配で仕方ないみたいだ。不安を残しながら黄瀬は、笠松と森山の背中を追い掛けるように歩き始める。
癒貴は、無事黄瀬から逃げる事に成功して、自分の教室に入り思い鞄を机の上にドス…と置く。
すると、すぐに後ろから癒貴の肩を軽くポンと叩く。気になって振り向くと、其処には彩矢の姿があった。
「やっほー、癒貴!なんか、元気ないけど、どうしたの?」