第5章 特別
「コイツをモノ扱いするんじゃねぇ!誰のモノでもないッ!」
黄瀬に向かって怒鳴る大翔。それでも、黄瀬は退こうとはしない。大翔の言った言葉は、無関心だ。だが、すぐに怪しい笑みへと変える。
「俺に喧嘩を売るって事は…それなりの覚悟が出来てるっスよね?」
黄瀬の瞳は、吸血鬼へと変える。大翔は、ひっそりと右手を握り拳作る。当たり前だが、人間が吸血鬼に勝ったという話は聞いた事はない。
大翔と黄瀬の視線が絡み合う。どちらも譲る気は一切ない。黄瀬が右足を動かそうとした時……。
「何、此処で油売ってるんだッ!!シバくぞッ!!」
遠くの方からドタドタと走って来て、黄瀬に向かって蹴り飛ばす。油断をしていたのか、見事に吹き飛ぶ黄瀬。それに対して、 癒貴と大翔は思わず唖然。
先程の緊張感はなんだったのか、ワケが分からなくなっていた。黄瀬は、背中をさすりながらヨロヨロと起き上がる。
「いきなり、何をするんスか?笠松先輩!」
「何、寄り道してるんだよ!集合時間過ぎてるんだぞ!!」
笠松に怒られ黄瀬は、集合時間…と呟いていた。その後、すぐにハッ!とする。どうやら、忘れていたみたいだった。すみませんっス!とすぐに笠松に謝る黄瀬。
「な、なんだ……あのやり取りは……。」
「わ、分かんないけど……今なら逃げられるし…。」
そう言って、2人はその場を離れようとした時、癒貴の背後に誰かが立っていたことにすぐ、気が付く。そして、その人物は、癒貴の手を握る。
「君と出逢ったのは、きっと何かの運命だ!俺と付き合ってくれはいか?」