第5章 特別
思わず身体を硬直させてしまった癒貴。黄瀬は、顔を逸らして癒貴の耳元で囁く。
「俺のモノになればいいんスよ。」
「……っ……。」
黄瀬のあまりにも低い声な為、息を飲み込む癒貴。そして、金縛りにあったかのように身体が動かない。いや、動かせないんだ。
それに気付いた黄瀬は、そのまま耳元で話し掛ける。
「あれ?もしかして、怖かったっスか?でも、逃げないのがいけないんスよ?動かないのなら、このまま血をもらちゃっていいっスよね。」
黄瀬は、そのまま耳元から癒貴の首元に移動させ、口を開く。癒貴は、声を出そうとするが、喉の奥で何かが詰まっているようで、声が全くでない。
「モデルの黄瀬涼太君が、俺の幼馴染に何してるかなー?通報すんぞ?」
声が聞こえ、黄瀬の動きが止まりやがては顔を上げる。ハッ…としたのか癒貴は、急に金縛りが解けたのか、声がする方向へと移動する。
黄瀬に声を掛けたのは、大翔だ。癒貴は、大翔の後ろに隠れる。
「……大丈夫か?」
大翔は、心配そうに言うと癒貴はコクリと頷く。その様子から黄瀬は不機嫌な表情へと変える。
「誰っスか?アンタは…。折角、癒貴っちと2人きりだったのに…。」
「あ?俺か?俺は、湯川大翔だ。コイツと幼馴染だ。てか、俺の大切な幼馴染に手…出してんじゃねぇーよ。」
大翔は、睨み付けるように黄瀬を見る。そうっスか…と素っ気ない態度を取る黄瀬。癒貴とは、態度が違っていた。
「邪魔しないで欲しかったっスよ。折角、俺のモノになるとこだったのに…。」