第4章 吸血衝動
最初、彼女に関する事を調べたがこれと良い情報がなかった。しかし、彼女の父親はどうやら吸血鬼のようだ。流石の僕も少々驚いた。【女】の吸血鬼が存在すると……。
僕達は、常識に捕らわれてはいけないみたいだ。現に今、僕の目の前に【女】の吸血鬼である、霧山癒貴がいるのだから。
僕は、彼女の首筋に牙を突き刺せ彼女の血を飲み始める。一口で分かった。他の女の血とはまた別の味。極上の血……だとね。程良い甘さに、ドロッとしてなくあっさりとした味。
そして、何故か僕の力が湧いてくるような感覚に陥る。
「んっ………っ、ぁ………ぃ……。」
僕の耳に入ってくる彼女の苦しげな声。まだ、飲みたいがそれを我慢して彼女の首元から顔を放す。が、よく見ると本来なら牙の跡が残る筈だが、残らない。消えていった。
恐らくこれは、彼女の治癒能力が高いと分かる。僕の口の中は、まだ彼女の血が残っている。彼女の瞳を見れば、金色に輝いて小さな口には、2本の鋭い牙が見える。それだけではなかった。
彼女の髪が、腰の辺りまで伸びる。恐らくこれが、彼女の本当の姿だろう。そして、彼女の弱々しい声が僕の耳に入ってくる。
「嫌………嫌…、血は……飲みたく……ない……。」
彼女は、何かと戦っているようにも見える。必死に何かを耐えている。これは…吸血衝動だ。覚醒をした吸血鬼には、必ず起こる現象だ。今まで、彼女は覚醒をしていなかったのだろう。
そして、僕が彼女の血を飲んで覚醒をしてしまった。彼女は必死に拒む。だが、ある意味それは吸血鬼の本能だ。本能に抗う事は容易ではない。
僕は、口元を僅かに吊り上げて、再び彼女の耳元で囁く。