第4章 吸血衝動
癒貴が咄嗟に走った為、3人は動けなかった。というか、3人は癒貴の瞳を見て動けなかったというべきなのだ。
「な…なんスか!?今の…!?」
「吸血鬼……なんでしょうか?」
「けどよ、【女】の吸血鬼って聞いた事ねぇぞ?」
流石の吸血鬼3人ですら、驚いていた。それもそうだ。吸血鬼にとって、常識では有り得ない事になっているのだから…。【男】しか存在しない吸血鬼が、何故か【女】の吸血鬼も存在してしまった。
常識を覆してしまったのだ。3人が気になって追い掛けようとしたが、既に遅かった。癒貴の姿が何処にもなかった。黄瀬は、ガックリと肩を大きく落とす。
「あーもー…。折角、良い獲物だったのに~。」
「黄瀬君、ドンマイです。」
「血の匂いもしないのに、よく良い獲物だ…とか言えるな。」
火神の言う通りだ。血の匂いもしないのに、黄瀬は癒貴に興味を持っているのだ。それは、黒子も同じように思っていた。すると、黄瀬の周りにキラキラ…と輝き出す。
「それは、俺の勘っス!」
そう、黄瀬のとびっきりの笑顔で火神と黒子に向かって言う。その笑顔を見た火神は、険しい表情を浮かべ、黄瀬を睨み付ける。
「死ね、黄瀬。」
「死ねとはどういう事っスか!ねぇ?黒子っち!」
黄瀬は、黒子に助けを求める。しかし、黒子は真顔で答える。
「黄瀬君、僕に近付かないで下さい。」
「えっ!?ひ、酷いっスよ……。」
吸血鬼なのに、犬のように泣き出す黄瀬。一方で、癒貴は狭く細い道に出て其処で荒れた呼吸を整える為、その場に座る。その時、癒貴の頭上から声が聞こえてきた。
「君が、霧山癒貴さん…だね?」