第3章 血
モデルの撮影で、デパートの近くから公園へと移動した。休憩をするため、近くにあったベンチに座ったが、ちょいと視線を別の方向を向けた瞬間、俺と変わらない女子がいた。
最初は、何か言われるんじゃないかと思っていたが、その女子は俺を見ようともしないし、溜息をしていた為、何故か咄嗟に声を掛けちゃったス。
女子は、驚いて顔を上げて俺を見る。しかし、騒ごうとはしなかった。それに、この時俺は違和感を感じた。そう、この女子から血の匂いが一切しないという事を…。
思わず俺は、その子に凝視してしまったっス。
「あの、大丈夫ですか?黄瀬君ですよね?確か…。」
その子は、不安そうな表情を浮かばせながら俺に問い掛ける。
「そうっスよ。もしかして、俺のファンっスか?」
俺は、営業スマイルをやりながらその子に聞くとその子の動きが止まった。その事に関して、俺は分からなくなり首を傾げると、その子はベンチから立ち苦笑をしていた。
「私は、貴方のファンでありません。それに、今…営業スマイルをやっているみたいですけど、私には効きませんよ。心から笑う黄瀬君が見てみたいですね。」
その一言に、俺は思わず目を丸くさせる。その子は、それだけを言って公園を出て行ってしまったっス。俺は、勿論の事…出て行く姿を茫然と見ていた。
やがて、数秒経ってから1人でハッ…と僅かに笑う。あの子にも興味が湧いたし、それに……何よりも血の匂いがしなかったから、あの子の血はどんな味か…気になるっスね…。