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厄介な天帝さん

第9章 9話


しばらくすると彼らの声は聞こえなくなっていた。
慌てて私も帰ろうと立ち上がった、私の背中の扉の向こう側

赤司「盗み聞きとはいい度胸だ。」

彼の顔はいつもの様でなく、笑みの一つもない。

赤司「僕は帰るが楓はどうする?」

あれ?と思い違和感を感じた。

赤司「僕の質問に答えろ、待たせるな、どうすると聞いている。」

私「私、私も帰るよ!!」

いつもの柔らかい雰囲気の彼とは思えぬ気の短かさだ。
これは本当に赤司征十朗なの?

赤司「そうだ、敢えて言わせて貰うが僕はお前の存在等どうでもいい。なぜならば僕は勝利の為に必要でないものは放っておく主義だ。僕の邪魔さえしなければ横にいさせてやってもいい。」

私「征十朗??どうしたの??何で??あの時、私を1番にしててあげるって言ったでしょ??」

今の彼の言ってる事はどう考えてもおかしい。
だって、彼の言った言葉だ。

赤司「気が変わったんだ、もういいわかった。…今後一切僕に近づくな。」

私「征十朗!!」

私の制止も無視し彼は勝手に歩いていってしまった。
残された私は雨の中考える。
過去にあった全てを思いだし優しい彼の言葉を求め天を仰いだ。
潤んだ瞳からは雨なのか涙かわからない水滴が私に容赦なく降り注ぐ。いつもの彼は私を見つけるとどんなに離れていても私の名を呼んで声をかけ呼び止めてくれたのに。
征十朗の背中はいつからあんなに大きかったのかな、追いつけなくなっちゃった。

意気消沈の私の視界に水色の傘が入ってきた。
驚く気力もなく、本能で誰だかだけを察知した。

黒子「風邪ひきますよ、帰りましょうか。」

そういう彼もどこか遠くを見つめている。

私「ありがとう、黒子くん。帰ろうか。」

優しい黒子くんは私の気持ちを察し新品のタオルを貸してくれた。
止まらない涙を黒子は励ますことはしてくれなかった。

黒子「…すいません…僕が無力なばかりに…」

本当は彼のせいじゃないのに謝る姿が今は見れない。

私「…あ、いつ、は、帰ってくるよね??」

黒子「…すいません、君の家ここでしたよね。…」

私「黒子くん!!」

彼もまた私の事を無視して足早に去って行った。

雨の中見上げた向かいの家の窓からは赤い髪が見える事はなかった。
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