第9章 9話
部活中も雨で、今日は反面しか使えず時間を区切ってコートを使っていた。
たまに校舎内を走ったりした。
その時、私は体育館を出た青峰君を追いかけている黒子くんを見た。
彼は雨の中傘も刺さず先を行く相棒を逃すまいと、ただ必死に走っていた。
そこで初めて目の当たりにしたキセキの世代と呼ばれた彼らの現状と事の重大さを知って嫌な焦燥感に煽られた。
不意に見た第一体育館はまさに願っていた事が起こる寸前。
ボールをつく音が消え、バスケ部の様子がおかしかった。
彼らの中心にいるあいつは私の位置からは見えない。
必死に窓の外を見ていた私に部員がチョップをして体育館に連れて戻られた。その時だった。
赤司「紫原、今なんと言った?」
時すでに遅し、彼の怒った声を初めて聞いた。
雨も降っておまけに体育館からじゃ校舎とは距離があった筈なのにそれでも声ははっきり聞こえた。
私は何としても彼の元に駆けつけたい一心を抑え渋々第三体育館に戻った。
中で何があったのか彼が今どんな状態か気が気じゃなくて部活もタラタラしてしまい、終わる頃に顧問の先生にこっぴどくしかられた。
反省はもちろんしていた。
私にも部活のキャプテンとしての自覚を持って今までどんなに逢沢くんの事があっても一心不乱に部活に向かっていた。それは単に逢沢くんがそれだけのどうでもいい存在だったということでは決してない。
反省するためにも今日は少し遅くまで残って自主練をした。
片付ける頃にはどこの部活にも残って練習をしている者はいないようだった。
案の定、バスケ部のいるだろう体育館もボールのつく音は聞こえてこなかった。
と、そこへ急に扉が開いて誰か人がいる気がし覗けば赤い髪を持つ彼と水色の髪の彼がいた。
最初は話している声が遠すぎてはっきりとは聞こえなかったが耳を済まして体育館の扉の近くにしゃがんだ。
黒子「…君は誰ですか?」
赤司「僕は赤司征十朗に決まってるだろ。…テツヤ。」
その瞬間、いつもの彼の優しい暖かい赤い目が黄色を強調し光って見えた。
黒子くんの言いたかった事は私にも何と無くだがわかった。
あいつはいつもとは違う近づき難いオーラを放ち空気をぴしぴしと凍らせていた。