第9章 9話
それからは、バスケ部は益々強くなっていつしか彼ら5人は私から遠い存在になってしまった。
さつきちゃんの笑う顔を見ることが少なくなった。
みっちゃんは私を気づかってか話すことが少なくなった。
それは3年生になってからはさらにこの状況が悪化し、彼らのキャプテンである赤司は誰をも寄せ付けなくしていた。
時折見る横顔は誰をも従えさせようとする、天帝。
私はもう彼の家を訪れる事がなくなってしまった。
それも彼の仕業だった。最近は数名の家政婦が来て彼の家を出入りする姿がよく目に入った。
彼にはいつだったか約束した事を今は忘れられている。
私「あいつはやっぱり嘘つきだ。」
私は今日もひとりぼっちで無機質の壁を見た。
電気も点けずだった部屋には向かいの窓から漏れる光が頼りだった。今日も彼の部屋には電気が点いていたがカーテンが閉まっていたため、赤い髪が見える事はなかった。
いつもの様に彼の部屋の場所はわかるのに、もう彼の部屋のベッドの位置は忘れてしまった。
そう思うと涙が止まらなかった。
ふと、彼の残した言葉が頭に蘇ってきて思い出した事があった。
赤司「俺を待っていてくれるか?」
彼が変わってしまう前の日に言った言葉だ。あの時は何かの冗談だと思い流してしまった事だ。
忘れていたけどあの言葉の真意がもしかしたら。
そう思うと私はすぐさま携帯を取り出し向こうの窓を見つめてメールを送った。
ブッブー
直ぐにメールを確認し、私は窓を全開にして彼のことを待った。
その数秒後向かいの窓はカーテンが開き、私が待っていた赤い髪の彼は少し嫌そうに窓の外に顔を出した。
私「あんたの言っていた事、前はどういう意味かわからなかったけど今ようやくわかった。だから…私はずっと待ってるから!!!…あいつにそう言っといて!!」
私の声の大きさのせいか言葉の意味にだったのか少し驚いた顔をした赤司はにやりと笑った。
赤司「そうか、伝えておこう。」
彼はそれだけ告げると直ぐに窓を閉めた。