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厄介な天帝さん

第5章 5話


世に言う修羅場とはまさにこの事なんだろう。
馬鹿な私はそんな事を思いながらも赤司の背中から逢沢君の様子を伺っていた。

逢沢「山吹さ、俺前に言ったよな。それに赤司もどういうつもりだ。優等生の振りして人の彼女に手ェ出すのそんなに楽しいかよ!!」

彼の声はいつにも増して低くて怖い。
その声がだんだん私に近づいてくる気がした。
そして、その距離はゼロになった。

逢沢くんは突然私の手を掴むと赤司から私を引き離した。

逢沢「俺が彼氏だろ、何で赤司ばっかなわけ!!俺に抱きつけよ、俺の方が!!」

途中で途切れた言葉は闇に飲み込まれ、代わりに鼻のすする音だけが耳に届いた。

私「ごめ、んなさい。」

赤司とは小さい頃からこうしてずっと隣にいたから私の中の赤司の立ち位置を深く考えたことがなかった。
ただ、私の接し方が周りから見ればおかしな光景に映ったのかもしれない。
赤司は背中を向けたまんま顔は見えない。
きっと口を出すつもりはないのだろう。

逢沢「俺はやっと山吹の事を振り向かせられたと思ったのに。…俺が気に入らないなら言えよ、何か欲しいもんあるなら買ってやるし、勉強だって赤司に負けねぇよう努力する。…なぁ、俺の何がいけないの?」

逢沢くんが何だかいつもと違う気がして怖くて声が出ない。

逢沢「山吹」

私「い…や」

私の口から出た言葉は拒絶の言葉だった。

逢沢「!!!もういい!!」

それを聞いた逢沢くんはつかんでいた手を離した。
掴まれていた手が圧迫感がなくなり血が通ってくる感じが気持ち悪かった。

逢沢「山吹。じゃあな。お前がどう言おうが俺はお前を離さねえから。」

闇に紛れるはずもなく彼の冷たい言葉が私を貫く。

逢沢「それから、赤司」

ドカッ
凄い音がして私に背ばかり向けていた赤司が後ろに2歩後ずさったが何とか踏ん張っていた。

逢沢「お前みたいのまじイラつく。それから、山吹は絶対そのネックレス外すなよ。」

それだけ言って彼は去って行った。

赤司は殴られた右頬を抑えてただ何かを考えるように空を見つめていた。

私「大丈夫??巻き込んでごめん、本当にごめん!!右のほっぺに湿布貼るから来て。」

そう言って彼の腕を引き私の家に入れようとした。
ばちんっ
その時、私のおでこに激しい激痛が走った。
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