第5章 5話
私達はご飯を食べ終わると自分の分の皿洗いをして、ひと段落着いてから帰る前にお茶をしてゆっくりする。
彼は優雅にお茶を飲むのが好きらしいが私はそんなの知ったことかと彼の邪魔をするのでいつも必死だ。
しまいにはデコピンで沈められてしまうのだけど。
赤司「カップは、置いといていいよ。後で俺が片付けておこう。」
私「ありがとう。しかしですね、もうちょっと、手加減という言葉をオボエテクダサイ。」
渾身の一撃必殺は本当に強力で人差し指だけの力か果たしてサイボーグか考えものだ。
そんなことはどうでもいいがおでこが腫れて痛む。
赤司「山吹はお茶を飲む時は静かにと教わらなかったのか?」
私「すいません。」
赤司君はとても良い笑顔です。はい。
赤司「さて、もうそろそろ帰らないといけない時間だろう。」
立ち上がった彼の目線の先を見れば大きな時計が8時を指していた。
私「そうだね。」
赤司「今日は助かったよ。湯豆腐も美味しかった。ありがとう。」
私「ううん。けど、湯豆腐も結局1人で作ってたじゃん。」
赤司「ワカメを入れられては困るからな。」
ふふんと軽く笑う彼は少しだけ幼く見えていつもの大人ぶってる顔もこうして見ればただの中学生だとおもった。
帰りは向かいである私の家の玄関までわざわざ送ってくれた。
赤司「おやすみ。また明日。」
私「うん。」
踵を返して戻ろうとする彼の背中は何だか大きいようで小さい。ただ何となく触れたくなって少し先を行った彼の背中に思いっきり抱きついた。
彼の服からはヒノキか何か優しい木の匂いがする。
赤司「…どうした?」
私「…何でもないよ、何でもないけど今はこのままでいて。」
赤司は私に掴まれたら絶対何があっても私を離したりしない。というか拒む事はしない、優しいからなんだろうけど。彼は他の女の子にもこうなんだろうか。そう思うと彼のお腹に回した腕に力を込めた。
ガシャン
突然家のレンガブロックの近くで自転車の倒れる音がした。
「お前ら何やってんの」
私も赤司も暗闇だったことと死角に彼はいたため気付かなかった。
私「逢沢くん…」
とっさに赤司のお腹に回していた手を離し逢沢君の死角になるよう赤司に隠れた。