第5章 5話
逢沢「まぁいいや、今日は俺帰るわ。」
紫原「うん。ばいばい〜」
このまま紫原がこなかったら私は路上で押し倒されていたかもしれない。
人通りが少ないとはいえ清潔感のかけらもないこんなとこではごめんだし、何しろ中学生でそんな関係にはまだなりたくなかった。
紫原「う〜ん、赤ちんに今日の授業のノートを借りたままだったけど。来週でもいいって言ってたのに何でまたメールですぐ持って来いなんて言うかな〜全く人使いが荒いよ〜。も〜。」
私「ありがと、助かったよ。」
紫原「別に俺は通りかかっただけだし〜。てか、楓ちんも気をつけなよね〜。皆が皆赤ちんなわけないじゃん〜。あ、あとお礼は赤ちんに言ってね〜じゃあ〜。」
私「何で?」
紫原「ん〜ほら。」
紫原が徐に指差した先は赤司の部屋のある方角だ。
赤司の部屋の窓は、秋なのに不自然に全開でそこからちらちらと赤い髪が見え隠れしていた。
私「紫原くん、そのノート私に貸して。」
紫原「赤ちんに持って行ってくれんの?」
私「まさか。ちょっと待ってて、」
私はそう言って急いでリビングに置いてあるふせんにメモを施し紫原くんの持っていたノートの適当なところに貼り付けて返した。
紫原「楓ちんも赤ちんもめんどくさいね。」
私「そーよね。でも、きっと私達は今はこれでいいんだ。」
相変わらず窓からは髪だけがちらついて見えるのに顔だけは絶対に出そうとしない。
その頑固さは赤司の可愛いところなんだと思う。
紫原「楓ちんが赤ちんに書いたメモ見ていい」
私「いーよ。」
そういって紫原は私の貼り付けたメモを読み上げた。
紫原「この時期に窓を全開にしてると風邪引くよ??p.sありがとう。by 楓」
素直じゃないな〜本当に2人ともめんどくさい。
でも、いいや赤ちんが怒ったりしてないなら俺たちには実害はないしね〜。
じゃあね〜。
とだけ言ってのほほんとした紫原くんは赤司の家のチャイムを鳴らした。
私もいてもよかったんだけど赤司と同じく人を立てているのだから返事は後日でいいし、なんせさっきの逢沢くんの事も考えて今日は帰る事にした。
赤司「紫原、夜分遅くに悪かったな。」
私は敢えて彼が出てきた瞬間を狙って家に入った。