第1章 はじまりの種
白「大丈夫か?」
少し低いけど優しく落ち着く声。
目をふさいでいた手をどかして白哉は
あらためて少女を見る。
少女と目が合い白哉の心臓は大きく動く。
「あ、りがとうございます白哉さん。
おかげで落ち着きました。」
白哉の考え的にまた男を見たら少女の体は反射的に男を拒絶する。
だったら自分が少女を家まで送らなければな
らない。
白「今日はもう家に帰れ。
私が送って行く。」
「そんな!!!
悪いです!助けていただいたうえに送ってい
ただくなんて!!」
白「私が心配なだけだ。
いくぞ。」
そう言って少女の手を引き小屋をでる。
まだ白哉の心は大きく動いていた。
約40年前に妻を亡くしポッカリと空いてしまった穴が埋められていくような。
久しぶりに白哉はこんな感情を抱いた。
「あ、ここで大丈夫です。
ここからは近いので。」
ありがとうございました。
そう言って離れていく少女。
白「まてっ!!!」
「え!?」
白「あ、いや、その。」
とっさに叫んでしまった白哉。
少女が離れていくのが寂しくて少女が消えてしまいそうで。
この少女を失いたくない。
白哉はそう思った。
白「名前、名前を教えてくれ。」
少女はふわりと笑い
「水瀬桜です。」
そして白哉の元をさっていった少女。
白「水瀬桜 ……。」
初めて聞いたその名はなぜかキラキラしてて……。
白哉は愛莉澄の姿が見えなくなるまでずっとその背中を見ていた。
この日から白哉の人生で2度目の恋が始まった。