第21章 蝶の奪還 episode4
山本「……よかろう。
お主の願いどおり、処刑が終わった暁には
旅禍どもを無傷で帰そう。」
ルキア「…あ、ありがとうございます……」
この言葉に、みな黙っていた。
勇音「…ひどい、どうせ生かして帰す気なんかないのに……」
卯ノ花「慈悲ですよ、勇音。
せめてわずかでも迷いなく、せめてわずかでも安らかに。」
山本「双極を解放せよ。」
山本の声と同時に、
何人かの覆面の使いが双極を解放する。
ルキアの手を結んでいたひもは切れ、
ルキアがゆっくりと上空へと上がっていく。
--------------
ルキアside
心がとても穏やかだ。
恋次の霊圧が消えかかり、
乱れていた私の心が穏やかさを取り戻しつつある。
総隊長殿の約束のおかげなのか、
あるいは、無様にも生に縋り付こうとする私を
兄さまが隙もなく、突き放してくれたおかげだろうか。
ルキア「ありがとうございます、兄さま。」
ルキアが双極の頂上に着いたとき、
双極が炎で包まれた。
そしてだんだんと形を変えていき……
京楽「……こいつは驚いたね…。」
双極は、大きな炎の鳥へと姿を変えた。
山本「そいつが双極の矛の真の姿。
極刑の最終執行者が在罪人を貫くことで
極刑は終わりを迎える。」
恐ろしくはない。
私はよく生かされた。
恋次たちと出会い、兄さまに拾われ、
海燕殿に出会い導かれ、
そして一護と桜に救われた。
つらくはない。
悲しくはない。
悔いはない。
心も残してはいない。
ありがとう、恋次。
ありがとうございます、浮竹隊長。
ありがとう、井上、石田、茶渡。
ありがとうございます、兄さま。
一護、桜…………
ルキア「さよなら」
ルキアの瞳から一粒の涙が流れたとき、
双極が目を見開き、ルキアをめがけて進んだ。
あたりが一面、光に包また。
目を開くと……
一護「よう。」
桜「大切な人も、記憶も、
もう二度と失くしたりしないんだから。」
コハクは双極とぶつかり合い、一護は背中の斬魄刀で双極を止め、桜は、ルキアの涙をぬぐった。