第20章 蝶の奪還episode3
「コハク、何してるの?」
コハクはある一点から動こうとしない。
コハクがいた場所には、あるものがあった。
「……お墓…?」
そこには本当に小さなお墓があった。
しかし、その周りには多くの花が添えられていた。
黄色い菊、マリーゴールド、キンセンカ、ワスレナグサ。
全ての花が美しく飾られていた。
ここに来た人は几帳面だったんだろう。
「………あ、雨。」
突然、雨が降り出した。
その時……、、、、
『待って、違う‼‼』
『何が違うんだよ‼‼』
「うああッ‼」
突如、桜を激しい頭痛が襲う。
この痛みは……
「あたしの……記憶…?」
『裏切り者め‼』
『構えろ、桜‼‼』
ズキンッ‼
ああ、この場所は……
『貴様は私の手で始末する‼』
ズキンッ‼
あの日、あたしが殺されかけた場所。
その瞬間、いろいろな声が頭に響く。
冬獅郎『桜。』
冬獅郎は、いつだってあたしを助けてくれた。
剣八『桜。』
剣ちゃんは、いつだってあたしとの戦いを望んでくれて。
一角『桜。』
一角は誰よりもいつだってあたしと仲良くしてくれて。
そして一緒にお互いを高めあった。
ルキア『桜。』
ルキアは最初はあたしのことを
桜殿なんて呼んでたっけ。
それでも、親友っていえる仲になって。
白哉『桜。』
一番最初にあたしを見つけてくれてのは白哉さんだった。
死神になってからもずっと面倒見てくれて。
この人がいなかったら、あたしは死神になっていない。
あたしは今、生きていない。
一護『桜。』
初めて一護のことを知ったのは現世のパトロールの時。
夕焼けの色をした髪が綺麗で吸い込まれそうになった。
一目ぼれだった。
一護に会いたくてあたしは死にかけながらも
コハクに現世まで連れてきてもらった。
記憶を失くしても、あたしは一護に恋をしたんだ。