第19章 蝶の奪還episode2
一角「そして隊長にもう1つ、
お伝えしたいことが……。」
更木「なんだ?」
一角はすこし間を置く。
これを言ったら隊長はどんな反応をするのか。
一角「俺を倒したのはオレンジ色の髪の
身の丈ほどの大刀を持った死神でした。
そして俺の傷を治したのは…………」
更木「その死神じゃねぇのか?
なんか妙な技を使うんだろ?」
一角「俺を治したのは、
俺を倒した旅禍ではなく、女の旅禍でした。
そしてその女は……黄色の髪でした……。」
そのたった1つの特徴に更木が反応する。
まさか……と言う目で一角を見る。
更木「おい……冗談ならやめとけよ。
俺はアイツに関しての冗談が1番嫌いだ。」
一角「そんなこと知っています。
冗談では俺はこんなこと言いません。」
更木「……アイツだったのか…………?」
一角「……わかりません……。
その女は黄色の髪で声もアイツにそっくりでした。
でも瞳が青かった。
そして俺を見ても表情をひとつも変えなかった。
アイツを殺したのは俺です。
もし俺が目の前にいたら、
アイツは一瞬でも動揺くらいするはずです。」
そう話す一角。
その表情はどこかツラそうだった。
更木「だが、テメェが俺にそんなことを教えるってことはテメェ自身分かってねぇんだろ?」
一角「……はい…………。」
そう。
一角自身、わかっていないのだ。
いや、理解していないのだ。
今まで流魂街で、アイツと同じ特徴を持っている女を見ても感じなかったもの。
その何かをアイツからは感じた。
一角「隊長……行くんですか?」
更木「当たり前だろ。強いヤツと戦えるチャンスなのに行かないバカがどこにいる?」
一角「……もし、もしその2人に会った時には……どうか隊長も感じてみてください。」
更木「強いヤツには何か感じるかもしれねぇが女はどうだっていいな。
アイツが今、ここにいる訳がねぇんだ。」
そう言って更木は部屋を出ていった。
一角は窓から走って行く更木を見ていた。
……アイツが今、ここにいる訳がない。
そんなこと1番よく分かっている。
でもなんだろう。
この胸の違和感は…………。