第16章 目覚めた太陽
ただただ桜は倒れていく村人を
見ていることしか出来なかった。
『危ない、後ろ!!!!』
そう叫んでも村人たちには聞こえない。
やるせない気持ちが桜を支配する。
『ねぇ、逃げて!!!危ない!!!』
どれだけ叫んでも答えてくれない。
目の前が血で染まっていくだけ。
村人「はやく、はやく《エンジェル》を!!!」
村人「あの血だけは守らなければ!!!!」
エンジェル。
あの血だけは守らなければ ということはエンジェルは村で大切にされているのだろう。
そのエンジェルとは?
村人「はやく、エンジェルをほこらへ!!!」
後ろを見て叫んでいる村人を見て桜も
後ろを振り向く。
『……えっ…。 』
村人たちに守られるように囲まれているのは
あの女の人だった。
女の人は村人たちに何かを話している。
「お願い、行かせてください!!!!
彼らの能力で勝てる相手ではありません!!!」
村人「それは私たちもよく分かっている!!!
ふつうの虚ではないことぐらい分かる!!!
でも、お前が死んだら元も子もないんだぞ!!!」
「だからって あたしが1人守られるのは……!!!」
村人「お前しかいないんだ!!!!
お前しかあの能力は使えないんだ!!!
やっと、数千年ぶりに誕生したエンジェルだという事を自覚しているのか!?!?」
「その能力のせいでこんな目にあうくらいなら
こんな能力いりません!!!!」
女の人の顔は 悲しみ そして 怒りに溢れていた。
しかし村人は彼女を守ろうと必死だった。
それほどその彼女の能力が大事なのだろうか。
村人「お前は一万年に1度の人材なんだ!!!!
村の危機の今、お前を守らず何を守る!?!?
お前を守って倒れた村人の気持ちも考えろ!!!」
「あたしはそんなこと望んでません!!!!」
桜は知らずのうちに涙を流していた。
目の前で起きている悲劇を前に何も出来ない無力さ。
村人と女の人の気持ち。
すべてが悲しい物語だった。