第10章 再会した記憶なき花
一「わりぃ変なこと聞いて......。
......つらかったろ......。」
「な、何言ってんの?
ぜんぜん大丈夫だよ?」
一「大丈夫なわけねぇだろ。
......記憶をなくして気づいたら知らない人。
なんの記憶もなくて不安で押しつぶされそうだったお前の心にその鳥の記憶が戻ってきた。
でも、その鳥と出会った場所はここじゃなかった。
それがまたお前の心を押しつぶしただろ。
お前にとっては忘れたい記憶。
でも自分にはこの記憶しかねぇんだもんな。
.........つらかったろ............。」
「...やだ、やめてよ一護。
ぜんぜんつらくないよ?」
一「......じゃあ、この涙はなんだよ?」
「え?」
桜は自分の頬を触った。
すると自分の手にはしっかりと水がついていた。
この時、桜はわかった。
自分はこんなにも記憶に押しつぶされそうになってたのかと。
「やだ...なんで涙なんか......。」
必死に拭おうとする桜だが次から次へと涙がこぼれてくる。
この姿を一護に見られてると思うと自分が情けなくなった。
桜は見られたくなくて一護に背を向ける。
一「...桜こっち向けよ.........。」
しかし桜は肩を震わせたまま一護に背を向けている。
一「...桜、大丈夫だから...」
「.........やだ。
なんで泣いてる姿なんかを一護に見せないといけないの......。
.........情けなさすぎる。
...もっと、強い人に生まれたかった...。」
一「......桜......。」
「...きゃっ」
一護は桜の両頬を優しく後ろから包み込む。
そしてゆっくりと自分の方を向かせる。
「......い、ち、、ご、、、」
一護の方を向いた桜の目の前には
一護の顔があった。