第4章 落とした指輪
「それより指輪…返してください」
彼をじっと見ると、待ってましたとばかりにニヤリと笑った。
「そんな態度で返してもらえると本気で思ってる?」
「それ、すごく大事なものなんです」
「そうでしょうね。今年やっと大学講師になれた翔ちゃんが必死に買ってくれたペアリングですもんねー」
そこまで知ってて、翔ちゃんの想いをなんだと思ってるのだろう。
とても腹が立った。
「そこまで分かるなら早く返してください」
「そこまで熱くなれるならさ、あんたも努力したら?」
「…」
「俺に返して貰う精一杯の努力」
そういうと、二宮さんはぐいっと私の腕を引っ張り、振り解けないで踏ん張る私に
「ね、返して欲しいんだろ?ちょっと来い」
そう言われ力が抜けた。