第1章 心臓の音 1
「それよりまな!お前また無理しただろ!」
『えっ、いや、そんなことない!』
急に孝ちゃんがずいっと顔を寄せて
眉間に皺を寄せてきた。
「今、大変なのはわかるけど無理しすぎんなよ!
大会前に急にまなが倒れたなんて聞いて気が気じゃなかったんだからな!」
そう言ってプイっと横を向いてしまった孝ちゃん。
『…でもお母さんの葬儀とか色々あったし』
「……」
一週間ほど前に母が亡くなった。
心臓の病気だった。
生まれつき心臓が弱くて、30まで生きられないだろうって言われていたらしい。
私のおばあちゃんも40しないで亡くなっている。
それでもお母さんは40余年も生きた。
ここ数年入退院を繰り返していたから私もなんとなく気づいてはいた。
私には父と弟がいるけど、
7年前に離婚してから別居していた。
父とはお母さんの葬儀の時に7年ぶりに顔を合わせたくらいだ。
お父さんは
こんなに弱いお母さんを捨てて逃げた薄情者。
大っ嫌いだ。
今も昔も。
そして私も…
母と同じ病気にかかっている。
だから体調が悪くなるとすぐ倒れて、
こうして孝ちゃんにも迷惑かけちゃう。