第2章 心臓の音2
(日向飛陽目線)
「ゲッ、数学の宿題やってねぇ…」
朝練を終えて教室についてから俺は気付いた。
「なんだ日向、また忘れたのか?」
「ドヤされんぞ〜?」
「う、うるせぇ!今からやるし!」
だって、この前の休みは青葉城西高校と練習試合してたからやる暇なかったんだよ。
「そういやさ、あそこの席の神崎ってやつ学校来ねえよなぁ〜」
「あー、主席合格したとかいう?」
「そうそう!」
さっきまで俺を茶化してきたクラスメイトが話してた会話がふと耳に入ってきた。
「なんで来ないんだろな?」
「さぁ〜?俺はカワイイに焼きそばパンかける!」
「あっ、ずっり〜!じゃあ俺はかわいくないに焼きそばパン!」
「お、俺はカワイイに焼きそばパン!」
なんとなく便乗して名乗り出たけど、
正直そんなことより早く課題終わらせなきゃいけないのにぃ…
うわー!しかも1限目数学じゃん!
やべー!居残りとかになったら練習できねぇ〜
すぐに前を向いてプリントを解き始める。
けど、俺の集中力は周りの雑音によって見事に打ち切られた。
「なぁ、なんか廊下騒がしくね?」
「なんだなんだ?」
「ん?」
俺も周りに合わせて声のする方を見たとき、
ガラリと
教室の後ろの扉が開いた。
入ってきたのは見たことのない女子生徒。
サラッとした絹のようになびく黒髪。
クリッとした大きな瞳が少し憂いを帯びている。
制服から見えるすらっと伸びた手足は驚くべきほどに白かった。
身長はそんなに高くない…
けど存在感が、なんかすごい…
その女子生徒は周りの注目を受けながら
そのまま窓際の一番後ろの席に座った。