第2章 心臓の音2
4月某日
鳥野高校に続く桜道の桜は昨日の暴風でほとんど散っていた。
みんなより少し遅れて初めて高校へ行く。
パリパリの真新しい制服を着て
仏壇の前に座る。
「お母さん、行ってきます」
お母さんがいなくなってからほとんど一人暮らしみたいになってるけど孝ちゃんがよく様子見に来てくれてるし寂しくない。
鍵をきちんと閉めたのを確認して階段を降りる。
『孝ちゃん!おはよ!』
「あっ、こら!まだ走っちゃダメだって山本さんに言われただろ!」
『大丈夫だって!』
マンションの下で待っている孝ちゃんのもとへ小走りで向かう。
「ほら、乗って」
孝ちゃんが自転車の後ろを顎でさす。
『あれ、孝ちゃんいつもチャリだったっけ?』
「今日から。まなが寝坊して走ったりしたら困るからな」
孝ちゃんは少し嫌味ったらしく言う。
『わーい!楽チン!孝ちゃん好きー!』
「うわっ、」
私はそのまま自転車の後ろにまたがって
孝ちゃんの背中に手を回した。
孝ちゃんは一瞬体勢を崩したけど
そのまま勢いよく坂道を下って行った。
『風が気持ちいいね!』
「ちゃんと掴まってろよ!」
そのままスイスイと学校まで付いた。
『じゃあ、き、教室行くから…』
「だな!まなならすぐ友達作れるべ!」
孝ちゃんはいつものようにくしゃくしゃと髪の毛を撫でる。
そしてそのまま孝ちゃんは4階へ
私は2階へ
1年1組ーーーーーーー…
『ここか...』
深呼吸を2回して心を着地させてから、
左足を一歩踏み出した。