第1章 はじめまして
わからない。名前がわからない。というか初めて見たような気さえする。隣の席なのに!!
なんで?だってさっき、クラスメートの顔はだいたいわかるって刺激のなさをぼやいてたのに。
気になりすぎて、寝てる人の数が頭からふっとんだ。
休み時間に、名前を聞こうか。まだ45分もある。
というか、失礼だよね?クラスメートに今更名前聞くのって……
悩んだ末に、私が出した解決方法は、『ひたすら観察』。
ノートとか教科書の名前を盗み見よう!
左ひじをついて、だるそうに授業を聞いてるふりをしながら、彼をちらっとみた。
鞄にはもちろんのこと名前なんか、書いてない。
教科書は背表紙が寝てる。
ノートも名前が書いてあるはずの表紙は見えない。
あ、名札!……うちの高校名前ないじゃん!
私は焦れったくなって、ノートの端っこに走り書きをして千切った。
「紺野真琴です。消しゴムありがとう。
よかったら明日お昼一緒に食べない?
お礼したいです」
小さくおって、彼の机に投げた。
彼はびくっとして、手紙を読み、私の方を向いて「わかりました」と口パクした。