第1章 はじめまして
その日は、気付いた時には、彼を見失っていて、何もなく終わってしまった。
翌日の昼休み、
「紺野さん」
「ひょえ?!」
後ろから聞こえた声に驚いて、いきなり立ってしまった。椅子が倒れそうな勢いだったのに、倒れる音じゃなくて、呻き声がした。
「なにやってんだ?黒子?」
ななめ前の火神くんが、私の後ろでしゃがみこんでいる男の子に声をかけた。
そうか、黒子くんっていうのか。
「ごめん!黒子、くん?痛かったよね」
「大丈夫です、すねに当たっただけなので」
ほうと息を吐いて、私を見上げた。
「ほんとにごめん」
「大丈夫です。それより、お昼、どうしますか?」
彼は真っ直ぐと私を見るから、少し反らしてしまった。
「えと、じゃあ、屋上とか……」
「わかりました。僕、お弁当じゃなくて購買なので先に行っててもらえますか?すぐに行きます」
「あ、うん。りょーかい」
ぱっとズボンの埃を叩いて、彼は立ち上がった。
背は私よりも低くて、彼は上目遣いで私をみる。
そのとき、どんなに可愛い女の子が、私に懐いてくれるよりも、
くすぐったくて、きゅんとする気持ちを、感じてしまった。
男の子なのに、上目遣いがめっちゃ可愛い!!