第1章 はじめまして
もう五月も半ばになって、高校生活にも慣れ、教室の顔ぶれはだいたいわかるようになった。
つまらない先生の雑談に、うつらうつらとしそうになる六時間目の授業。しかも、よりによって一番疲れる数学。
ぼけーとして、私は揺れるクラスメートの頭の数を数えていた。
「あの……」
隣から男の子の小さな声がした。
ふと横をむくと、水色の目が私の方をじっとみている。何を考えてるかわからない、印象の薄い顔だった。
「消しゴム、落ちましたよ」
「え、ああ。ごめん、ありがとう!」
「いえ」
彼はそっと私の左手に消しゴムを乗せる。
中学の頃から使ってるものだから、小さく丸くなって転がりやすい。
ふともう一度、彼みた。
……あれ?
……この人、だれ?