第1章 はじめまして
屋上の隅っこで風に吹かれて、空を見てた。
待ってる人の名前は黒子くん。
名字さえわかれば、あとは名簿をみて、名前はテツヤくんだと判明。
お礼のためのクッキーも準備万端。
少し雲が出て、お日様の光が弱くなっているおかげで、暑苦しくない今日の天気は、いつもの濃いブルースカイではなくて、どこか眠たそうな水色の空模様だ。
「黒子くんみたいだなぁ」
気持ちがつい口に出て、独り言になってしまった。
「なにが僕みたいなんですか?」
「うぇ!?」
色気のない私の声が、恥ずかしい。
サンドイッチとパックのジュースを持った黒子くんが、隣に座ってた。
「お、おかえり!」
「?ただいま。それより、なにが僕みたいなんですか?」
「あ、今日の空の色!黒子くんの雰囲気と似てるなぁと思って」
彼も空を見上げて、そうかなぁという感じに首をかしげた。
「あ、あのね!急に呼び出してごめん。消しゴムぐらいでわざわざ呼び出すのは大げさだなと思ったんだけど、黒子くんと話してみたくて、えと、これは、消しゴムプラス、私と話してくれたお礼ってことで」
言い訳をまくし立てて、クッキーを押し付けた。
「これ、焼いてくれたんですか?」
今日の空模様の目が、よくわからない表情で尋ねてくる。
「はい。味見はしたけど、口に合わなかったら無理しないでください」
しばらく考えるように沈黙。
困らせてしまったのかな……
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
ふと、こちらを見て、微かに笑った。
無表情しかしらなかったから、目の色以外、印象に残ってなかった。でも。柔らかな黒子くんの笑顔は、私の頬が熱くなりそうなほど、男前だった。
神様、ずるいよ。
もっとこの人のこと知りたくなるじゃないか。
「なにを話せばいいでしょう」
「え?」
「このクッキーは、君が僕と話したいということのお礼もあるので、なにがお話ししませんか」
「え、律儀!!」
また頭の言葉をそのまま言っちゃった。私の悪い癖だな。
「いや、その、非難じゃなくて、すごいなっていうか、紳士だなというか、優しくてびっくりというか」
「普通です。僕もあなたに聞きたいことがありましたし」
「私に聞きたいこと?」
「はい。あの、失礼かもしれませんが……どうすれば身長が伸びるでしょうか」
……長身女子にとって、キツイ質問がいきなりきた……