第10章 柊
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それから、今いる一同は女の子を取り囲む形になりながら、座っていた。
何から聞けばいいのかと、皆が中々口を開こうとしない所へ最初に切り出したのは澤村。
「君は一体何者なんだ?
どうしてあの時殺されたのに生きている?
俺達を助けてくれる理由は何なんだ?」
その質問に皆が女の子に注目した。
確かに、ここはどこなのかとか、影の正体は何なのかとか、聞きたいことは沢山ある。
だけど、その事よりも今は目の前にいる女の子の正体を知っておくべきではないかと澤村は判断したのだろう。
知らない校舎にいた時も、この子はいきなり表れ、初めバラバラになっていた皆をあの教室まで連れてきてくれた。
その時は質問をする暇もなく、ただ「この教室から出てはダメ」とそれだけを言い残し、数分すると次々に巻き込まれただろう人達をそこへ連れてきたのだ。
そして、青城のマネージャー、及川、音駒の夜久が表れたのを最後に、音駒のリエーフが教室の扉を開け、あのような事態になった。
影に無惨な姿にされ、今目の前にいるのがあの時の女の子本人だとして、何故あの時殺されたのか、自分達を助けてくれる理由は何なのかを知りたいのだろう。
「私は、少なくとも人でない。
だけど、あなた達と同じようにちゃんと生きている。
私の本体は私じゃないから、真っ二つにされても頭を潰されても私は死なないの。
私を消したかったら、本体を殺さなきゃ私は消えない。
あの時殺されたのはその方が動きやすかったから……そうしたの。
あなた達を助けるのは、それがお姉ちゃんの願いだから……お姉ちゃんがそれを望むから私はお姉ちゃんの願いを叶えるの。」
「お姉ちゃん?」
兄弟がいるのか?と岩泉が聞けば、女の子は首を横に振る。
「私はお兄ちゃんからお姉ちゃんにプレゼントされて……大事にここまで育てられたの。」
?
皆の頭にハテナマークが浮かんだ。
お兄ちゃんがお姉ちゃんにプレゼントしたとは、一体。
謎は更に深まる。
少なくとも、何となくこの子は人間ではないんだろうなって事を察した。
「そういや、名前って何て言うんだ?」
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