第10章 柊
無表情のまま女の子がそれだけ言うと、すくっと立ち上がり、同じように山口の事も覗き込む。
山口は「ひっ」と小さく悲鳴を上げ、逃げようとすれば、澤村が「大丈夫だ」と、山口を落ち着かせていた。
「……他の皆はいないんですか?」
危害が無い事を知ると、赤葦が黒尾に問い掛けた。
赤葦に聞かれ、黒尾は僅かに眉を寄せれば、躊躇った後で口を開いた。
「……あの場所からまだ、戻ってねぇよ。」
「?」
あの場所?
あの場所とはあの奇怪な学校の事だろうか。
それならば今いるこの体育館はあの学校とは無関係な場所なのか。
「一体ここは何処なんですか?」
「ここは、嬢ちゃんが守ってくれている安全な場所。
始めいたあの学校とは無関係な空間だから影に襲われる心配はねぇんだと。」
「無関係な空間?」
何か知ってるならもっと詳しく教えてくださいと言おうとして、女の子が黒尾の横に並び赤葦を見下ろした。
「全部……私が説明する。」
「…………。」
*