第10章 柊
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甘い香りで目を覚ました赤葦と山口。
どうして寝てるんだっけと、ぼんやりした頭で考えを巡らせれば、それぞれから気が付いたか?と声がした。
見れば、赤葦を黒尾と研磨、山口を澤村と菅原が心配そうに覗き込んでいて気が付いた事を確認するとそれぞれ安堵のため息をつく。
「山口良かった……、無事だったんだな。」
横たわったまま山口が澤村の顔を見るなり安心感からか、目には涙が浮かぶ。
赤葦も少しだるい気がする身体を起こすと、「お二人、無事だったんですね。」と笑って見せた。
「お前も無事で何よりだ。」
「怪我はない?」
「ええ、大丈夫です。
それより……」
赤葦はキョロキョロと辺りを見回し、状況を把握する。
どうやら今皆がいる場所はどこかの体育館らしい。
そして今いるメンバーは……烏野では、澤村、菅原、縁下、山口の4人。
青葉城西が岩泉、花巻、松川の3人。
音駒が黒尾、研磨の2人。
あとは、梟谷の赤葦の合わせて10人になる。
他の皆はどこにいるのか赤葦が口を開こうとした所で、今いるメンバーの誰でもない声が赤葦の耳に「気が付いたのね」という言葉で届けば、すぐさまそちらを振り向き、声の主を見るなり、赤葦は目を見開いた。
赤葦の視界に捉えたのは、教室で影に身体を真っ二つにされ、首を切り落とされ、挙げ句の果てには頭をぐしゃりと潰されたハズの女の子の姿だった。
女の子は何事も無かったかのように、赤葦の目の前まで来ると膝を折り、赤葦の顔を覗き込む。
反射的に赤葦は僅かに身を反らし、黒尾達を見るが顔色を変えていない所を見ると危害はないのだろうと瞬時に判断をし、女の子に向き直る。
「……大丈夫そうね。」
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