第9章 福寿草
この影がこの世界に巻き込まれた内の誰かを殺したという意味で捉えてもいいのだろうか。
だとすれば……
少なからず赤葦の知ってる誰かがひとり……
殺されている事になる。
「うるさいよ、だから何だって言うの。
それこそあんただって私の何を知ってるって言うのよ。
大好きな人を奪われた苦しみなんて知るわけない……私は、あいつに復讐するの、あいつに同じ苦しみを味わわせるの!
だから……」
「!」
だからあいつに関わってる奴らを苦しめるのと、影の視線が赤葦に向けられた。
正確には目深に被ってるフードで顔はわからないものの、影の出す殺気でフード越しに自分に向けられている事はわかる。
影は舌打ちすると、女の子に添えていた手を肩に移動させ、そのまま邪魔だと言わんばかりに女の子をはね除けるとそのまま女の子は意図も簡単に福寿草の中に倒れ込む。
その拍子に、女の子の制服のポケットから何か丸いものが飛び出し、コロコロと赤葦の元まで転がってきた。
何だろうとそれを手に取れば、それはピンポン玉サイズの透明な樹脂で出来たキーホルダーで、中には花畑と同じ福寿草の花びらが2枚閉じ込めた状態にある。
「これは……」
可愛いでしょ?福寿草の花びらを樹脂で固めてキーホルダーにしたの。
京治君にもお揃いであげるね、福寿草の花言葉は幾つかあるんだけど、その内のひとつで、「幸福を招く」ってあるんだよ。
私、京治君には幸せになってもらいたいな。
昔、彼女が息を引き取る直前に彼に残した言葉。
どうして今まで忘れていたのだろう。
あの子は俺の大切な……
「かづきさん?」
*