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【ハイキュー!!】金木犀

第8章 クロッカス




「それは、今までの何時かわからない記憶。
なんかねー、断片的にたまーに頭の中に出てくるのよ。
所謂フラッシュバックみたいな?
そんなのばっかだからスッキリしなくてアンタ達に愚痴ってたの。」


「そうですか……」


「なんてゆーか……」


迷惑極まりねぇ。


縁下と松川は少なからずそう思った。


「そう言えば、あなた達はどうしてこんな偏屈な場所にいるの?」


一通り彼女の愚痴を聞かされた後でそんな質問が投げられる。
今さらなんだと思いながら、その言葉をそのままツーアタックででも返してやりたかったが、止めておいた。


「俺達もほぼ貴女と一緒ですよ。
経緯はわかりませんが、気付いたら学校にいて、影に襲われて、穴みたいなのに落ちて、気付いたらこの巨大迷路、今ここです。」


「ナニソレ、不思議の国のアリス?」


口許に手を当て、ニヤニヤと縁下を小馬鹿にしたような態度で茶化してくるが、不思議の国のアリスならまだどんなに良かったか。
少なくとも影に追われるような恐怖はないだろうし、仮にあっても夢落ちだろう。
そもそも、彼女はバカにしてくるが、恐らく縁下、松川と一緒にいる限り影から襲われる危険性は彼女にもあるだろうと思う。


「てゆーか、それじゃああなた達は何を頼りにこの迷路をさ迷ってたの?」


「え?」


「だって、普通ならそんなワケわかんない事態に巻き込まれたら冷静でいられなくない?」


「あー、まぁ……それはそうかもしれませんが……」


「あんま根拠はねーけど、絶対出られるって信じてるからな。」


「……。」


頭の後ろに手を回し、松川が縁下に対して、横目で「な。」と言えば、それに答えて縁下もコクリと頷く。
松川の言う通り確かな根拠はない。
だけど、何となく……何となくだけど、縁下も助かるって思ってる。


「バッカみたい。」


「え?」


彼女の空気が一変した。




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