第8章 クロッカス
「だからー、あたしね?そいつに言ってやったの!!
テメーみたいな男のクズはこっちから願い下げだっつーの!!」
何故こうなった。
確か、教室で影から穴みたいな所に落とされて、気が付いたら巨大迷路の中に倒れてて、その内青城の松川さんと遭遇して、一緒に出口?を探してる途中でドレスを着たこの人に出会いつつ……
縁下と松川は女性からそれぞれ首に腕を回されながら、引き寄せられ、絡み酒みたいなテンションで愚痴を聞かされながら宛もなく適当に迷路を歩いていた。
「おい、何なんだよこの人、酔っぱらいか?」
「俺が知るわけありませんよ、お酒臭くはないんで酔っぱらってはないと思いますが?」
とは言うものの、正直絡み酒以上に面倒臭い気がしなくはないのだが。
なんだってこの人はこんな危険な場所にいるのか。
それもドレスなんか着て、これではまるで結婚式当日に逃げ出した花嫁みたいではないか。
まぁ、さっきから男と別れただの、捨てただのとは言っているのであながちそうなのかもしれないが……
そもそも……
「あ……あの、すいません!!」
未だ愚痴り続ける女性の言葉を遮り、縁下が割って入れば「なによー、」と女性が軽く眉を寄せ縁下に顔を向ける。
話を途中で遮られて気分を損ねてしまったのか、些か女性は不機嫌そうだ。
「あの、貴女は一体どうしてここにいるんですか?」
「は?」
「だって、ここは多分普通の世界と違いますよね?
なのに、何で貴女みたいなこの世界とは不釣り合いな人がこんな所にいるんですか?」
縁下の質問に女性の眉間の皺が深くなり、反対側にいる松川も黙って2人の様子を見守っていた。
「別に……そんなの私の方が知りたいわよ。」
少しの間を開け、女性の言葉に縁下と松川が顔を見合せる。
女性はため息を着いた後で、ようやく2人を開放し、抱えるものが無くなった腕はそのまま女性の胸の下で腕を組まれた。
「気が付いたらここにいたのよ。
その前は何をしていたかなんて覚えてないわ。
覚えているのは、結婚式前日に彼から「信じてる」って言われた言葉だけよ。」
「信じてる?」
「あれ、けど今まで男を振っただの何だの愚痴ってましたよね。」
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