第2章 睡蓮
「はい、では話を整理すると、徹君も夜久さんも目が覚めたらここに居たと言う訳なんですよね。」
ざっくりとした聖夜の説明に及川と夜久は頷く。
今3人がいるのは教室の中央。
もちろん及川や夜久がいるからと言って青葉城西や音駒の学校ではない建物で、おまけに中学校や高校といったざっくりとした建物の正体すら分からない状態でいる。
ただ、わかるのは学校。
学校とわかるのは、どこの学校にも欠かせない黒板があるから。
ただ、不可思議なのは今いる教室には黒板しかなく、教壇や机、椅子はない。
時間を確認しようにもどうやら時計もないようで、窓から見える景色から察するに5時とか6時といった所だろうか。
10月にも入ると日が落ちるのが夏場よりも早くなる。
それを思った所で、聖夜があれ?っと教室の隅にある物体に気が付いた。
薄暗い教室とはいえ、一応はギリギリ電気を付けなくても顔が認識出来るくらいだったからそのままにしておいたが、さすがに隅っこは真っ暗くなっているので今まで気が付かなかった。
かといって得体の知れない建物で無闇やたらに動きたくない。
ましてや、ぼんやり見える物体でさえ何か恐ろしい化物とかだったらどうしようと考えても、当然『あれ何かな?』といった選択肢に含まれる。
聖夜は取り敢えず、及川の袖をクイクイと引っ張り、あれ何だろうと話を持ち掛けた。
聖夜の指差す方向を及川と夜久の視線が注目する。
「ホントだー、何かあるね。」
なんだろー、と及川が敬礼みたく遠くのモノを見る仕草をする。
確認の為に動こうとしないのは少なからず及川にも警戒心があるからだろう。
「あるってゆうか、最悪のパターンだといるんだろうな。」
何か動くモノが……。
顎に手を添えながら、夜久が2人の恐怖心を煽るような事をサラリと言えば、ピクリと及川の肩が跳ね、出来れば口に出さないで貰いたかったと、聖夜は及川の腕にしがみついた。
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