第2章 睡蓮
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「翔君……」
もぞっと身を丸めた所で、頭に感じた僅かな布の感触に聖夜はゆっくり目を覚ました。
目を開ければ、広がるのは真っ白な純白の色。
あれ?っと聖夜は目をパチクリさせる。
さっきまで、自分は知らない学校へといたハズなのだが、今度は何故か学校すらない。
何で、どうして、と混乱してると髪の毛を誰かにサラリと撫でられ、その時初めて誰かに膝枕をされていると悟り、頭をゆっくり90度上に持ってけば、聖夜のよーく見知った笑顔が自分を見下ろしながらヘラリと笑っていた。
「聖夜ちゃんおはよー、けどごめんねー、俺は翔君じゃなくてとぉぐふっ!!」
聖夜を膝枕していた人物、及川徹が言い切る前に下から顔面に無言のパンチをくらい、そのまま後ろに倒れ込んだ所を聖夜は慌てて身を起こした。
どうやら先程の真っ白な風景は及川の着ていたジャージの色だったらしく、数秒考えた後で今度はハッと我に返りキョロキョロと辺りを見回すと、もう1人の人物が2人を見ながら何とも形容し難い顔で苦笑していた。
地元では見ない独特な真っ赤なジャージに短い前髪の男子。
聖夜が気付くと、取り敢えず「ナイス顔面パンチ」と一言送る。
誰だろ?と首を傾げると、あ。っと、その人は自分の事を親指で差し今度はニコッと笑う。
「俺、夜久ってんだ、夜久衛輔。
高校3年、音駒のバレー部。」
「あ、先輩ですね……私は瀬河聖夜です。
青葉城西高校の1年で、男子バレー部のマネージャーしてます。」
ペコリと頭を下げると、夜久に宜しくなと笑いかけられる。
「ちょっと、聖夜ちゃんいきなり顔面パンチとか酷いよ!!」
後ろからドーンと及川に抱き付かれた聖夜は、座っていた体が前のめりに倒れ込む。
いつの間にやら復活した及川は何でそんなにツンデレなの、可愛いじゃんバカー!!などと聖夜のうなじにグリグリと額を擦り付けながら訳のわからない事をわめき出す。
明らかに何だコレと2人を見る夜久に、聖夜はすいませんと頭を下げる。
「一応……うちのバレー部主将なんです。」
こんなんでも、と付け足す聖夜に今は苦笑するしかない夜久だった。
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