第6章 勿忘草
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「そっちへ行ったら駄目どぅわっ!!」
「だあっ!!」
ガバリと起き上がってすぐ、頭に衝撃を受けた澤村。
痛みとともに、黒尾の悲痛な叫びも耳に飛び込んできたので、どうやら激突した相手は黒尾に間違いないだろう。
澤村はぶつけた額を押さえてゆっくり頭を上げれば、案の定澤村以上にぶつけたらしい額を押さえて、黒尾が言葉無しに悶えている。
「てんめっ……石頭か……まじいてぇ……」
涙目で未だ痛みに耐える黒尾とは逆に、地味に痛みが退いてきた澤村は取り敢えずすまんと一言謝っといた。
「あれ?てゆーか、ここ何処だ?」
左右を見ながら澤村が黒尾に聞いた。
確か、凄い頭痛に襲われて一度気を失って……それからの記憶はないが、気を失う前は確かに桜の木にいたハズなのだが、今度は校舎裏らしき場所にいる。
けど、よく見てみれば建物は校舎じゃなくてドーム型をしているので多分体育館の裏側だろう。
そしてそこにひっそり佇む大きな木。
その大きな木の根元には不自然に僅かに浮き上がった土に、小さな青い花が数本置かれていた。
「……あれ?」
「……気付いたか?」
澤村の様子に黒尾がため息をついた。
本来ならば知らない場所かもしれないが、今いる場所は知っている。
いつの間にか記憶の隅に追いやっていた記憶。
どうして忘れていたのだろうか。
ほんの数ヶ月前の記憶だというのに。
根元の不自然に浮き上がった部分はお墓だ。
数ヶ月前、この場所に黒尾と翔と簡単にだがあいつの墓を作ってやった。
学校の裏に大丈夫か心配だったが、黒尾が滅多に人が来ない場所なんだと、ここに埋めた。
そして、近くに咲いていた青い花を数本置いてやったんだ。
ここは……
「森然高校?」
「みたいだな。」
「じゃあ、やっぱりこれは……」
「セッターの墓だよ。」
(やっと思い出してくれた。)
2人の背後に、男の子が佇んでいた。
そして、男の子の更に後ろには、鉈を持った影が見下ろしている。
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